ラズパイは個人でIoTシステムを作るのに適したデバイスですが、肝心のインターネットに繋ぐためには回線契約が必要です。
固定回線を引いている場所に設置するなら普通にこれを利用すれば済む話ですが、そうでない場所で使用するなら別途USBモデムやモバイルWi-Fiルーターなどを導入しないといけません。
しかしWiMAX +5GやPocket WiFiといった一般的なモバイルWi-Fiルーターの月額料金は4,000円から5,000円程度かかります。IoT専用で使用するにはコスパが悪過ぎますね。
もちろん用途次第ではありますが、ラズパイで使用するならそんなに高速高品質な回線である必要はありません。MVNO、いわゆる格安SIMを適当なUSBモデムやモバイルWi-Fiルーターに刺せば十分です。
ところがIoT/M2M向けの格安SIMは法人専用で提供されていることが多く、個人が契約するのは難しかったりします。
そこで個人契約が可能でラズパイにおすすめな格安SIMを3つ紹介します。
HISモバイル
HISモバイルは旅行会社のHISと、老舗MVNOである日本通信が共同で提供している格安SIMサービスです。
とにかく安くインターネットに繋ぎたいなら月額198円から利用可能なHISモバイルがおすすめです。
従量制のビタッ!プランなら100MBまで月額198円で高速通信が可能
HISモバイルでは従量制プランとしてデータ通信専用のビタッ!プランが提供されています。
従量制なので毎月の料金はデータ通信量に応じて決まりますが、100MBまでであれば月額198円で利用することが可能です。通信量が少ないIoT/M2M用途に最適ですね。
他にも超格安なMVNOはいくつか存在しますが、そのほとんどは高速通信が不可能。しかしHISモバイルならこの低料金でも100MBまで高速通信が可能というのがポイントです。
データ定額440プランなら1GBまで月額440円の定額で高速通信が可能
ビタッ!プランは従量制なので料金は定額ではありません。データ通信量が100MBを超えると月額は一気に770円まで跳ね上がります。
100MBに収まるかどうか不安だという場合は、一旦データ定額440プランを契約してみると良いでしょう。これなら月額440円で1GBまで高速通信が可能ですし、1GBを超過しても低速化するだけで料金が高額になることはありません。
リリース当初は両者間でプランを変更することが不可能でしたが、2022年6月6日からは可能になったので安心して試すことができます。
ただしビタッ!プランは回線のキャリアがdocomoとSoftBankの2種類から選べるのに対して、データ定額440プランはdocomo回線のみの提供となっているのでそこだけ注意してください。
povo2.0
povo2.0はauを提供しているKDDIのオンライン専用ブランド。docomoにとってのahamo、SoftBankにとってはLINEMOのような立ち位置のサービスです。
他社のオンライン向けサービスと大きく異なる点は、povo2.0は月額基本料が無料だということです。
低速通信のみなら無料で運用することが一応可能
povo2.0は基本料が0円で、トッピングと呼ばれるものを購入することで高速通信が可能になったり、通話料の割引を受けることができる仕組みになっています。
しかし一切課金をしなくても音声通話やデータ通信を利用することは可能です。特に通信速度については上下最大128kbpsに制限されますが、テキストベースの通信であればこれくらいの低速でも通信に支障はないでしょう。
ただし長期間利用、運用するのであれば注意が必要です。povo2.0は定期的に料金を支払わなければ強制解約される恐れがあります。
長期間継続利用するためには定期的な課金が必要
ラズパイで自動収集したデータを定期的に送信するようなIoT/M2M用途に最適かと思われるかもしれませんが、povo2.0は長期間に渡って無料で運用することで来ません。
具体的には最後に購入した有料トッピングの有効期限を迎えた翌日から180日間、期間内の通話料とSMS送信料の合計額が660円を超えていなければ順次利用を停止されてしまいます。
現状有料トッピングは最安220円から提供されており、これを180日に1回以上購入しておけば済む話ですが、ラズパイに組み込んだ後は完全に放置…みたいな運用をするなら定期的に購入処理を行わないといけないので要注意です。
また無料にこだわる場合、半年毎に契約し直せばずっと0円で運用することも可能かもしれませんが、強制解約後の契約審査に100%通過できる保証はありません。
安定した運用を望むのであれば、HISモバイルなど一般的な格安SIMを利用することをおすすめします。
インターリンクLTE SIM
インターリンクLTE SIMもIoT向けな格安SIMです。
ラズパイで固定IPアドレスを使いたいなら、HISモバイルやpovo2.0よりもインターリンクLTE SIMを契約しましょう。
月額1,100円から固定IPアドレスが使用可能
格安SIMに限らず、一般的にモバイルデータ通信サービスではプライベートIPアドレスが払い出されます。そのためWANからラズパイにアクセスしたいのであれば大多数の格安SIMは不向きです。
しかしインターリンクLTE SIMならどのプランでも標準で固定のグローバルIPアドレスが割り当てられるので、簡単にリモートアクセスすることが可能になります。
固定IPアドレスではない格安SIMでもSoftEther等のソフトウェア、外部サービスを駆使すれば同等の環境は作れますが、インターリンクLTE SIMであればそんな煩わしいことをする必要はありません。
ただし外部のネットワークから簡単にアクセスできるということは、第三者が不正にアクセスすることも容易になるというリスクがあるので、セキュリティには気を付けましょう。
最安プランなら月額1,100円で固定IPアドレスのインターネット回線が手に入ります。
データのアップロードに最適な上りのみ高速通信可能なプラン
インターリンクLTE SIMでは上りの通信、つまりアップロードのみ高速通信が可能なプランも提供されています。10GBと30GBの2択だけですが、通常のプランと比べるとかなり割安です。
テキストベースのデータなら基本的に最安プランの128kbpsでも問題ないと思われますが、例えばカメラモジュールを接続して異常を検知したら静止画や動画を撮影して送信したり、リアルタイムで映像を配信するといった使い方だと上りで大容量の通信が発生します。
ファイルサイズが大きいデータを扱うなら、上り高速プランを検討してみると良いでしょう。
550円でデータ通信が使い放題になる24時間制限解除クーポン
インターリンクLTE SIMでは24時間データ通信が使い放題になる、24時間制限解除クーポンが提供されています。
このクーポンは30GBプランと上り高速プランでは利用できませんが、それ以外のプランでは1回550円の追加料金を支払うことで、各種速度制限が解除された状態で通信することが可能です。
povo2.0でも同様のオプションを有料トッピングとして提供していますが、povo2.0では固定IPアドレスは使えません。固定IPアドレスが必要で、かつ大容量の通信も行いたいならインターリンクLTE SIMは最適です。
まとめ
IoT/M2M向けを謳っている法人向けの格安SIMを個人が契約することは難しいですが、個人向けでもIoT/M2M向けの格安SIMはいくつか提供されています。
軽いデータをアップロードするだけならHISモバイルやpovo2.0、インターリンクLTE SIMの最安プランでも十分です。
ただしpovo2.0は無課金だと半年で強制解約されるなど、それぞれメリット・デメリットがあるので用途やデータ通信量に合わせて選択することをおすすめします。
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